抗がん剤が関係した薬局プレアボイド・インシデント事例ライブラリー

十分な休薬期間をおいてフルツロンへ処方変更されたが、休薬期間もティーエスワンの自宅残薬を服用し続けていた患者


【Prescription】処方内容は?
70 歳代の男性。
〈処方箋1〉 外科。4 月 21 日。
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ティーエスワン配合カプセル T25  4 Cap   1 日 2 回 朝夕食後  14 日分
 (ティーエスワンは 4 月 21 日から服用)
チアトンカプセル 10 mg      2 Cap   1 日 2 回 朝夕食後  28 日分
ノイロビタン配合錠        2 錠   1 日 2 回 朝夕食後  28 日分
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〈処方箋2〉 外科。5 月 19 日。
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フルツロンカプセル 200      4 Cap   1 日 2 回 朝夕食後  28 日分
チアトンカプセル 10 mg      2 Cap   1 日 2 回 朝夕食後  28 日分
ノイロビタン配合錠        2 錠   1 日 2 回 朝夕食後  28 日分
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【Incident】何が起こったか?
 患者は、コンプライアンス不良のため自宅にティーエスワンが残っており、休薬期間中もティーエスワンの服用を続けていた。そのため、ティーエスワンからフルツロンへの切り替え時に休薬期間をおかない状態となってしまった。

【History】どのような経緯で起こったか? どうなったか?
 患者は悪性腫瘍のためにティーエスワンを服用中であったが(処方箋1)、休薬期間の設定などがあって飲み方が複雑であり、服薬コンプライアンスは極めて悪かった。そこで今回から、特に休薬期間の設定のないフルツロンへ変更になった(処方箋2)。
 処方箋1のティーエスワンは 14 日分で(他の薬剤は 28 日分処方)、理論的には 5/4 がティーエスワンの最終服薬日であった。今回の受診はその 14 日後だったため、医師は処方歴からティーエスワン服用終了後 2 週間経過しており、フルツロンを続けて処方しても問題ないと判断した。
 薬局にて、薬剤師がこれまで服用していたティーエスワンの服用状況を確認したところ、患者は「自宅に余っていたので、昨日まで服用していた。」と述べた。この時点で、ティーエスワン服用終了後、時間をおかないでフルツロンを服用することになってしまうことが判明した。
 薬剤師は医師に対して、本患者の服薬ノンコンプライアンス状況について電話で説明した。医師は、患者がそのような飲み方(医師が休薬のつもりで 14 日間を設定していたが、その間も残薬のティーエスワンを服用していたこと)をしているとは、全く認識していなかった。もちろん、ティーエスワン服用終了後、他のフッ化ピリジン系抗がん剤に切り替える時には休薬期間が必要であることはよく認識していた。
 薬剤師と医師との協議の結果、フルツロンの投与開始日を 7 日後の 5 月 26 日とし、投与日数を 21 日分に変更することとなった。

【Assessment】なぜ起こったか? 何が問題か?
 医師は、患者がティーエスワンの休薬期間中も飲み残していたティーエスワンを継続して服用していることを全く認識していなかった。また、抗がん剤の自宅における残薬が関係して種々問題が惹起することを予測していなかった。さらに、患者の服薬ノンコンプライアンスの詳細な状況、患者の服薬に対する意識・認識などについて、把握していなかった。
 患者は、抗がん剤(ティーエスワンなど)には休薬が必要な場合があることを全く認識していなかった。実際、ティーエスワンからフルツロンへ変更された理由も、患者がティーエスワンの服用方法(例えば、「4 週間服用後、2 週間休薬する」など)を理解できないためであった。

【Plan】二度と起こさないためには? 確認ポイントは?
○医師、薬剤師による回避
 患者の服薬コンプライアンスの実態を把握することが必須である。服薬コンプライアンスに関して、基本的に「高齢患者では服薬は正しく行われていない」という認識を持って服薬指導にあたるべきである。一般的に、高齢者では記憶力、理解力、情報収集能力などの不足によって、医薬品の不適正使用が生ずると考えられる。また、年齢層に関わらず、一般的に服薬遵守は難しいことも認識しなければならない。適正な使用を遵守するための工夫などに関して、全ての患者とその家族に十分な服薬指導を行うべきである。
 患者宅における残薬の実態を把握することは必須である。そのためには、薬局における患者インタビューのみでは不十分であり、患者に残薬を毎回の診察時に持参するように指導する、可能であれば薬剤師が患者宅に赴き、残薬を整理することも極めて有用である。
 患者とその家族の「薬剤への認識」を高めるために、懇切丁寧な説明を行う必要がある。特に、抗がん剤に対しては、「治療効果を高めるために多めに服用しよう!」「他の薬と併用しよう!」「余った薬はもったいないので決められた以外の日にも服用しよう!」といった考え方は極めて危険であることを認識させる必要がある。

○患者とその家族による回避
 服薬の実態(飲み忘れ、飲み過ぎなど)を記録し、医師や薬剤師に申告することが重要である。薬の飲み忘れや飲み過ぎは、治療効果や副作用の発現に大きく影響することを認識する必要がある。自宅には、必ずといってよいほど残薬が存在することから、定期的な整理を実施する。どのように整理してよいか不明な場合には、薬剤師に申告して、薬局などに持参して整理してもらうことも可能である。残薬を自己判断で服用することは危険であることを認識する必要がある。
 特に、休薬期間が設定されている抗がん剤は、休薬の重要性(連続して使用すると副作用が強く出る可能性が高く、休薬期間をわざわざ設ける必要があること)を患者自身が認識することが必要である。
 医師や薬剤師からの指示を遵守するとともに、疑問なこと、解決したいことがあれば、医師や薬剤師に対して積極的に問いかけることが必要である。「聞くは一時の恥、聞かざるは一生の恥!」というが、医療では「聞かざるはあなたの一生をダメにする!」ことを認識すべきである。

【Instruction】服薬指導の例は?
「この薬は、きちんと服用していれば問題ありませんが、副作用と思われる症状が出たら申し出てください。決められた量を服用しないと、例えば、治療効果をあげようと考えてこの薬を 2 倍量飲んだりしたら、場合によっては 2 倍以上の副作用が出て危険な状態になる可能性もあります。また、薬を休むように指示されている時に薬を継続して服用すると、やはり副作用が強くでることがあるのでとても危険です。」
「自宅に残っている薬を自己判断で服用することは非常に問題です。現在、服用している薬との相性が大変悪いこともありますので、絶対に指示された薬以外を服用しないようにしてください。副作用が予想以上に増強する可能性があり、極めて危険です。現在の薬の治療効果に不満をお感じでしたら、遠慮なく相談するようにしてください。」


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